移住者と地元の人とのつながりの場をつくる、移住・定住支援のイベント「MEETUP!SAGA(移住者の集い)」。
今年度第一弾を、令和3年10月23日(土曜日)に小城市にて開催いたしました。
主催の特定非営利活動法人 灯す屋様より当日のイベント体験レポートをいただきましたのでご紹介いたします。
“案内人”とあるく、新しいMEETUP(出会い)のスタイル
和のまち・小城(おぎ)。
佐賀県の中部に位置し、銘菓「小城羊羹」で有名なこのまちで、2021年度1回目の「MEETUP!SAGA(ミートアップ!サガ)」を開催しました。
MEETUP!SAGAは、2019年1月から佐賀県内各所にて開催している移住者交流イベントです。佐賀県内の移住支援を行う特定非営利活動法人灯す屋と佐賀県庁移住支援室が共同で開催している企画で、「佐賀県への移住者」「佐賀県に移住を検討している方」「佐賀県でずっと暮らしている方」を対象にしています。ここで知り合った人たちがつながりをつくり、佐賀の暮らしをもっと楽しんでほしいという想いで、さまざまなスタイルのMEETUPの機会をつくってきました。
しかし、昨年より続くコロナ禍によって、みんなで集まり交流するあらゆる機会が奪われました。昨年度はオンラインでのトークイベントがメインとなり、参加者同士のつながりがつくれなくなってしまいました…。
そこで、今年度は新型コロナウイルス感染予防に十分配慮した中でできる企画として、「まちあるき」を行うことに。そのまちを知り尽くした「まちの案内人」に、暮らすまちの魅力を存分に伝えてもらおう!というローカル好きには垂涎ものの内容です。
暮らすひとの“顔”を綿々と紡いできた、小城の小冊子
今回の舞台である小城市は、2005年に旧小城町、旧三日月町、旧牛津町、旧芦刈町の4町が合併して出来ました。4つの町それぞれに異なる特徴がありますが、今回は小城の中心部に位置する旧小城町をメインに案内していただきました。
「まちの案内人」である株式会社音成印刷の音成(おとなり)さんと眞子(まなご)さん。なぜこの2人が案内人なのかというと、彼らが10年以上も小城を紡ぎ続けている小冊子の存在があるから。小城を楽しく暮らす人には欠かせないフリーペーパー、「おぎなう」です。
「おぎなう」は現在64号まで発刊。特に14号以降、表紙には小城のひとが映っています。それは、ここに暮らすひとを大事にしたいという想いが込められているためです。新しくお店をはじめるひとや地域のために活動しているひとなど、「おぎなう」はたくさんの小城を“暮らすひと目線”で伝えて続けてくれています。今回は、地元に生まれ育った音成さんと、「おぎなう」の編集長であり小城の情報のスペシャリストの眞子さんから、小城の魅力を伝えていただきました。
小城の“顔”が見える、ローカルなまちあるき
10月23日土曜日、天気に恵まれた小城の昼下がり、準備万端でやる気溢れる音成さんといつもどおりの優しい雰囲気の眞子さんに連れられて、まち案内が始まりました。
はじめに、小城市の複合施設である「ゆめぷらっと小城」に行くのかな…と思いきや、道路の反対側へ渡ります。
そこには、なんだか楽しげな「おぎのからあげ」の文字が。
なんと、コロナ禍で勉強したり遊んだりする場を失くした子どもたちのために、お店を開放しているとのこと。店内にはお菓子やカップ麺など、唐揚げ屋さんには普通なさそうな商品が並んでいます。こどもファーストって、こういうことなんだなと感じますね。
その奥にある昭和の香り漂う純喫茶「ルージュ・エ・ノアール」や昔ながらのカラオケ店「パステルトーン」を通り昔からの小城のまちを感じてもらいながら、音成さんが次に向かうのは…路地。
「僕が子どもの頃、友達の家に遊びに行くときに通ってた近道なんです。」
確かに、こんな道は観光客にはもちろん、引っ越してきたばかりの新参者にもちょっとレベルが高い道。音成さんのワクワク感に引きつられて、なんだか皆の表情にも笑顔が増えてきました。
そして、たどり着いたのは老舗和菓子店の「大門堂」さん。小城で最も歴史ある寺院・円通寺の大門が近くにあったということで付けられた店名です。
ここ、小城の和菓子店には珍しく「羊羹」ではなく、「おこし」が看板商品のお店です。ツアー時にもたくさん試食を配ってくださって、とてもおいしく頂きました。
何よりも、大門堂のおかみさんが音成さんに「しんちゃん(=音成さんのこと)、ちょっとコレ持っていきんしゃい!」と手土産を渡しているシーンが印象的で、音成さんが長年この地で築きあげてこられた信頼の一片を覗いた気がしました。
続いて訪れたのは、豆乳専門店の「あしかり豆美人」さん。古民家をオシャレにリノベーションした店舗に入ると、パーっと明るいお店の皆さんが迎えてくれます。
栄養満点の小城産大豆をつかって出来たプリンやソフトクリームに、みんなで舌鼓。さらに、この日に試作されたという、わらび餅までふるまってくださいました。
「市外の方々に、小京都・小城に行きたいなと思ってもらいたい」という想いから、なんとご自身で人力車をひいてまちを案内することもあるそうです。頼りがいのあるご主人とみんなを笑顔にする明るい奥さまに惹かれて、小城を好きになる人がどんどん増えていきそうです。
歴史ある酒蔵で語らう、小城暮らしの魅力
そして、あしかり豆美人さんから少し歩いて、座談会の会場である「小柳酒造」さんに到着。ここの酒蔵は、これまで市民によるコンサートや作品展示などで活用された言わば小城の文化の発信基地。現在は小城観光まちづくりプロジェクト合同会社さんが改修を進められており、地元素材を使ったクラフトジンの製造を行う“小城蒸溜所“として近くオープン予定で、これから小城のまちづくりの中核を担う場所になりそう。
普段入ることのできない酒蔵が座談会の会場だということで、参加者にも小城の歴史や文化的な魅力を感じてもらえました。
座談会は、「佐賀の暮らし観光案内所」のメンバーであり、嬉野の老舗旅館・大村屋の当主である北川健太さんに進行をお願いして開催しました。なお、「佐賀の暮らし観光案内所」とは、佐賀のそれぞれの地域に生きる人たちと「友だち」になれるような観光(=暮らし観光)を紹介しているチームで、今回のMEETUP!SAGAの企画づくりから運営まで灯す屋と一緒に行っています。
まず、今回のためにつくられたという、MEETUP!SAGA 【小城編】限定の特製抹茶豆乳ラテ(豆乳アイス入り)(!)が皆さんに届けられます。小城の老舗割烹料理店「寿屋別館」さんに、音成さんが特別にお願いして作られたというここでしか味わえないスペシャルなドリンク。あしかり豆美人の豆乳と大門堂の大門おこしも入っていて、参加者からも歓声があがります。
今回のイベントには、小城を離れて17年経ち地域おこし協力隊としてUターンされた方や、小城市内に勤めているIターン移住者の方、宮崎県出身で小城の祖父母の家に暮らしながら佐賀大学に通っている学生、転勤をきっかけに愛知県から家族で佐賀に移住してきたファミリーなどなど、多種多様な方々にご興味を持っていただき参加をしていただきました。
小城との距離感や関わり方はそれぞれ違いますが、皆さん共通して感じられていたことが、「住んでいるけど小城がどんなまちなのか、よく分かっていない」とか「なかなかつながりをつくれていない」ということ。コロナ禍の影響により、地方移住への関心は高まっているものの、つながりづくりも同時に難しくなっていることが浮き彫りになっています。
今回、まち歩きをしてみて強く感じたことは、まちを一緒に歩くことによって参加者同士が仲良くなれる、ということでした。まだあまり知らないまちを、ドキドキワクワクしながら冒険をするように歩くことによって、隣のひととの距離感を縮めることができるんだと思います。懇親会やご飯を一緒に食べるのが難しくても、人と人はしっかりと心をつなぐことができるんですね。
今回のMEETUP!SAGAの参加者の方々からも、口々に「参加してみて楽しかった」「知らない魅力がたくさんあった」「佐賀はなんもなかって皆さん言うけど全然そんなことない。むしろ、いいところがたくさんあることをちゃんと発信した方がいい」「ぜひ次の吉野ヶ里編や伊万里編も参加してみたい」などと嬉しい声をいただきました。参加者の日々の暮らしの喜びに少しでも繋がってくれたら、嬉しいです。
そして、嬉しいニュースが!
一緒に企画をしてくださった音成さんと眞子さんは、この小城まちあるきツアーを今後も行っていけるように作戦を考えていらっしゃるそうです。小城のまちがこれからますます楽しくなっていきそうですね!!
最後に、ご協力頂いた音成印刷の音成さん・眞子さん、大門堂さん、あしかり豆美人さん、小柳酒造さん、小城観光まちづくりプロジェクト合同会社さん、寿屋別館さん、そして小城に暮らす皆さん、本当にありがとうございました。温かい小城の人たちの“笑顔”が、とても印象的なMEETUP!でした。