日本一周バイクの旅が、まさかの佐賀とご縁を繋いでくれました

萬正 よしふみさん / はなさん / このみさん

萬正 よしふみさん / はなさん / このみさん

埼玉県 / 神奈川県小城市

  • 移住種別Iターン
  • 移住の時期2023年
  • お仕事トラック運転手 / ウェブディレクター
  • 共通の趣味 バイク旅行

佐賀県の中でも真ん中あたりにある小城市。端正な街並みは九州の「小京都」とも呼ばれるこの町に、バイクを愛する夫婦が移住してきました。
萬正(ばんしょう)さん夫婦。見慣れない苗字は、関西がルーツ。佐賀にも小城にもまったくご縁がありませんでした。今日ここにいるのが不思議なご夫婦と娘さん。どのように佐賀へたどりついたのか、数奇な人生に触れてみました。

「日本一周バイクの旅で、偶然に偶然が重なったふたりです」

-- おふたりのご出身地を教えてください。

萬正よしふみさん (以下、よしふみ):千葉県生まれ、埼玉県育ちです。同じ苗字は、石川県の輪島市とか、大阪とかに多いみたいです。

萬正このみさん (以下、このみ):私は高校3年生まで福井県で、そこから就職で東京の方、横浜とかです。

-- おふたりともルーツは違うのに、なぜ佐賀県へ

このみ:長くなりますよ。いいですか。

-- いいでしょう。お願いします。

このみ:2021年にバイクで日本一周の旅をしていたんですね。お互いに。

-- 一緒に、ではなく、それぞれ別に?

このみ:はい。最初に会ったのが沖縄です。当時のTwitter(現X)で繋がった第三者の共通の知り合いがいて。

-- ああ、バイク仲間同士で繋がるようなグループ的なものがあったんですかね。

このみ:はい。その人もたまたま同じ日に沖縄にいて「近くにいるなら一緒にキャンプしましょう」と誘われて、行ってみたらそこによしふみがいました。

よしふみ:その時は自分が料理を作りましたね。料理人をしていたので。

このみ:何を作ってくれたかはおぼえてないですけど。その時は、キャンプが終わってじゃあという感じですぐ別れました。

-- 初対面からピンときたとかではなかったんですね。

このみ:誰とでもそんな感じなんですよね。旅をしていたら旅人同士、またどこかで出会うこともあるでしょう。じゃあまたって。そうしたら次は、長崎県の平戸ですれ違いました。彼のバイクが少し個性的なんです。黒のバイクに黄色のラインが入っていて。

-- 目立つんですね。

このみ:はい。あれ今すれ違ったよねってTwitter(現X)に書いたら彼も気づいてくれて引き返してきて、わあ!ひさしぶりみたいな感じでバイクにまたがったまま10分15分くらいしゃべって「じゃあ先を急いでいるんでバイバイ」って。

-- あれ、そこで一緒にごはん、とかでもないんですね。

このみ:はい。日本一周の間はお互いに予定があるので。それでまた後日、福岡の友だちの家に泊めてもらう約束があってですね。到着したら、そこでよしふみがお酒を飲んでいて。今度は山口まで一緒に行って、そこで別行動して、鳥取でまた会うことになって、こんなに何度もバッタリ会うなら最終目的地が北海道なのも同じだしこのまま一緒に回ろうよっ、てことで最後は北海道を一周してそこでじゃあまたってなって、なんだかバッタリ会うことが多い人だったなという感想でしたね。

(長い話になりますよ、と言って本当に長い話になるこのみさん。)

「新潟県のサイトウさんのご縁で夫婦になりました」

※このあたりでよしふみさんは、娘のはなさんと公園遊びをしはじめています。

-- いやいやいや、解散してしまったじゃないですか。そこでもやっぱり連絡先を交換せず?

このみ:はい。それで終わったんですけど、その後私がひとりで新潟へ行った時にですね、たまたま知り合ったサイトウさんというおばちゃんがいて、泊まっていっていいよというのでお言葉に甘えて泊まらせてもらったんですね。

-- はい。

このみ:勝手にそのへん使って寝ていいよというのでそうさせてもらって夜が明けたんですけど朝ごはんは一緒に食べようと言ってくれて、そのときに「あんた彼氏は?」と聞くんです。個人的な話なんですけど私はあんまり男性に、そういう思いを持たない性格なんですね。友だちのひとりに見てしまう。

-- はい。

このみ:というようなことをサイトウさんに伝えたら、あなたそれは違うわよって。誰かを好きとか彼氏がどうとかじゃなくて、あの人は今どこにいるのかな、そう思う気持ちが大事なんだよって言ってくれて、そのとき私いま、よしふみのこと思ってるわ、うわーってなって、サイトウさんありがとうってお礼を言って、彼に会いにいきました。

-- 急に出てきたサイトウさんが重要な分岐点だったんですね。

このみ:お互い日本一周も終わったことだしあなたのこと好きみたいだから付き合おうよって言ったら、付き合うの面倒だから結婚の方がいい、じゃあ結婚しよう。そういうノリでした。ノリみたいな結婚です。

(このみさん、はなさんを眺めながら微笑むよしふみさん。)

「熊本か福岡か。ピンときたのは九州の真ん中、佐賀でした」

※このあたりでよしふみさんは、娘のはなさんと戻ってきました。

-- 長くなりましたがようやく移住の話に進めそうです。お互い佐賀に縁のなかったふたりがどうして佐賀に移住することになったのでしょうか。エピソードの中で思い出深かったのは沖縄、平戸、福岡、北海道とかですよね。なんならそれまで住んでいた関東が一番自然です。

このみ:移住の言い出しっぺは、私でした。横浜で勤めていた当時、女性の先輩から、都会の子育ては大変、人が多いし車も多いし、公園で遊んでても柵の向こうはすぐ道路だしもう危なくて目が離せないって。私も福井の田舎で生まれ育って、親も自由に遊びに行っておいでって言うタイプで、自分はそういうのが合っているというか、開放的に子育てしたいと思ったんですね。じゃあその環境として都会はどうか。私の子育てと都会は違うんじゃないかと感じて田舎に移住したいと言いました。

よしふみ:日本一周する中では、なんか九州が良かったんですよね。特に熊本の阿蘇とか。本州に住んでいる人がバイクで阿蘇に来ると結構グッとくるものがあるよね。デケえなと。車でも行ったことあるんですけどバイクは開放感があるのでより一層デカさを感じる。

このみ:それで東京有楽町のふるさと回帰支援センターで全国の移住サポートをしていると聞いたので友だちと一緒に行ってみました。私たちが最初は熊本推しだったので、まずは熊本県のブースに行って、そのあと福岡県のブースにもちょっと。そしたら佐賀県の移住サポートの方に「佐賀もよかよ!」と声をかけていただいたので、じゃあちょっと聞いてみようとなりまして。話を聞いていたのは1つの県につき10分くらいでしたけど、帰る時にはもう「佐賀だな」という気持ちになっていました。

-- ちょっと待ってくださいね。わずかな時間で何が起きたんですか。

このみ:なんだったのかな、自分の中の地図ですかね。子育てを田舎でしたくて移住するんだからちょうどいいのは佐賀、みたいな。帰宅してからよしふみには熊本も福岡も近いよと説明しました。そしたら「おお」みたいな。九州の真ん中あたりだね、旅しやすそうだねということで、佐賀はすぐに確定しました。

-- 地図ですか…。

(山口県の角島にて、ふたりのバイク。黒い車体に目立つ黄色のライン。)

(仲間たちと日本最北端の宗谷岬にて。)

「佐賀は旅の拠点、娘も一緒に、どこへでも行ける」

-- 佐賀の中でも小城市だったのはどうしてですか。

このみ:それも、ふるさと回帰支援センターの中で佐賀県のイベントみたいなのがあって、小城市はようかんで有名じゃないですか。私の出身の福井県も水ようかんで有名なんです。給食にようかん出ますよねってそういう話になって。
その後もいろいろ小城市の方から親切にしてもらうことがあってですね、ちょうどそのとき妊娠していて産婦人科ならここがいいよと教えてもらったりとか。なんか縁を感じたんです。

よしふみ:九州の真ん中あたりの佐賀の真ん中あたりの小城市は、旅の拠点としてちょうどいいと思います。移住してから、県内なら古湯温泉、武雄温泉、嬉野温泉には行きました。日帰りのキャンプもよくします。娘が5歳になったらバイクの後ろに乗せてもう少し遠くへ出かけたいですね。

-- お仕事はどうされてますか。

よしふみ:転職しました。こっちに来てからはトラック運転手です。走り回ってるのが好きだし、九州の道をもっと知りたいというのもあったのでちょうどいいですね。もう2年目になるのでこのあたりの景色は見慣れてきましたね。

このみ:私は未経験でウェブディレクターに採用していただきました。ジョブナビという佐賀県内の求人情報のサイトがありますが、それを活用し今の会社に応募したら「ジョブナビはうちが作ってるんだよ」って言われて、社長も「なんかご縁だね」って言ってくれています。

-- ほんとご縁ですね。おふたりが知り合ったのも、結婚したのも、佐賀にしたのも。ほんの少しご縁がかけ違えば、ここにいなかったはずの夫婦に感じます。

このみ:行き当たりばったりなんですね。なんで佐賀にしたのと聞かれると今みたいに長くなっちゃう。説明が面倒なときはダーツ投げたら佐賀に当たったとか適当に言ってます。
大丈夫ですか、こんな話ばっかりで。

-- いつもと違っておもしろいかもしれません。最後におふたりの佐賀での目標をおうかがいできますか。

このみ:私はこの子が大きくなって、無理やりは絶対嫌なんですけど、もしバイクに興味をもってツーリングに行きたいって言ってくれたら、3人で行きたいですね。

-- 何歳になれば行けますか。

このみ:中型二輪は最短で16歳です。行きたいところに一緒に行ってもらえたら。

よしふみ:僕は関東に住んでいた時から狩猟に興味があって、それと調理師免許も持ってるので、最終的な目標はジビエのお店を開きたいですね。自分で狩猟して、捌いて料理して。

このみ:いい夢だと思ってます。よしふみの好きなようにしてほしい。私も、めちゃくちゃ手伝いたい、本当にやりたいと思ってます。

-- ありがとうございました。お店がオープンしたら絶対に教えてください!

(子どもをもうちょっと遊ばせて帰ります、とご夫婦。遊具のある方へ仲良く歩いていきました。)

文章:いわたてただすけ
写真:川浪勇太

公開日:2025年03月27日
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