あの先生でよかった、と思い出してもらえる働き方を佐賀県で見つけました。

今川 孝史さん

今川 孝史さん

広島県武雄市

  • 移住種別Iターン
  • 移住の時期2023年
  • お仕事小学校教員
  • 教員志望の理由 憧れの先生がいたから

佐賀県西部にある武雄市、その中でも武内町は人口2,500人ほどの小さな町です。
今川さんは、佐賀県教育委員会が新設した「さがUJIターン現職特別選考」(※)を活用して、佐賀県全体より人口の多い(119万人!)広島県広島市の、都市部の小学校から、この小さな町の小学校へと働く場所を変えることを決めました。
勤務、1年目。移住を決めた経緯とは。都市と地域の違いは。そして、移住の前と後で、教員という仕事への意識に変化はあったのか。気になるところを聞いてみました。

※さがUJIターン現職特別選考:他都道府県(政令市)の小学校の現職教員で、佐賀県へ移住を考えている教職員に特別選考を実施する新制度。R4年度は小学校教諭等、R5年度は中学校教諭等にも拡大。今川さんはその第一期事例。

大きな学校から小さな学校へ、ギャップを楽しんでいます。

-- 今川さんのご年齢は?

今川孝史さん(以下、今川):25歳です。

-- 若いですよね。最初に教員として着任されたのは、どんな学校でしたか。

今川:新卒で、広島県の中でも一番大きな規模の小学校に勤めました。全校生徒数は約1,200人。1学年6クラス。何をするにもパワーが必要でした。着任したのが新型コロナ1年目で、いきなり休校しちゃって。いざ、学校が始まっても、手洗い消毒からマスク着用の徹底など、今までは存在していなかった仕事も、何から何まで試行錯誤でやっていて。こういうのも先生の仕事なのかなぁ?…とハテナマークを処理しきれないまま、あっという間に月日が過ぎていく感じでしたね。

-- 通常のルートには乗れなかった感覚なんですね。

今川:ええ、イレギュラースタートだったんですよ。職場を佐賀に変えた今年から、ようやく新型コロナが5類(※)に移行しました。普通の行事ってこういうことなんだ、普通の日常はいいなと、教員4年目にしてようやく感じています。子どもたちはもちろん、僕にも笑顔が増えました。

-- 都会の学校と地域の学校に、違いはありますか。

今川:とにかく人数が違います。広島では教職員が100人。いまの小学校は全校生徒で 100人です。僕が受け持っている2年生のクラスも当然少人数なのでクラスの中に隠れるところがありません。すべて教員の目に入りますし、給食の準備も全員でやります。暇にしている子、役割のない子が発生しづらく、誰かを待たせるような状況が少ないので、教員としてはとてもやりやすい、考えやすい環境ですね。

-- 先生が必ず見てくれていることが、嬉しいかもしれませんね。

今川:悪さをするにしても、あの子たち、目の前でするんですよ。「おいそこ、ダメだぞそれは…」とすぐ言える状況。まだ小学校低学年ってしていいことと悪いことの判断がついていないこともあります。そこですぐ気づいてあげて、なんでそれ悪いと思わなかったの。今のこれは悲しかったよね。というように教室の中のできごとにその場でひとつひとつ丁寧な対応をできるのは、小さな学校のいいところだと思います。また、ひとりひとりの「よいこと」にも気づいて、褒めてあげることもできます。

※5類:感染症の危険度合いに基づく分類。新型コロナウイルスは令和5年5月から、季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げとなり、マスク着用が個人の判断となりました。

(当番はありません。大体のことは、みんなで。全力で。)

移住者向け、現職者向けの教員採用試験が佐賀県で見つかりました。

-- 広島県から佐賀県へ。地域ごとの教育委員会を越境して職場を変える例は、それほど多くはないように感じます。移住を考えた理由を教えてください。

今川:福岡県での大学生時代に知り合った妻が、もともとは武雄市出身の人でした。最初はお互いの出身地の広島と佐賀にそれぞれ就職して、遠距離を行き来してお付き合いしていました。それが2年くらい経って、そろそろ結婚の頃合いかなと。じゃあどっちがどっちに動くかと話をしている時に、彼女はあんまり佐賀を離れそうにはないな、と感じたので、じゃあ動ける方が動きましょう、という流れで僕が佐賀へ移住することを決めました。

-- 特別な試験などを受ける必要があるのでしょうか。

今川:そうです。自治体が変わる時、教員試験を受け直さなければいけません。僕の場合は、佐賀に移住することを先に決めたので、検索しましたね。(佐賀県、教員採用試験、)と。3年間、教員を続けていたので、経験者向けの何かおトクな情報があるんじゃないかと思ったら、たまたま政令市から佐賀県への移住者を対象とした「さがUJIターン現職特別選考」という制度が始まることがわかりました。

-- まさにこれは自分のための制度だと。

今川:そうですそうです、現職枠あるじゃんと資料を取り寄せて、実施要項も問い合わせて、たまたま筆記も免除で面接と模擬授業だけで。これだなと思いました。そういうところも自治体ごとに違って、移住を前提に調べてみないとわからないことなので、知らない先生の方が多いんじゃないかなぁ。

-- 模擬授業はどんなことをしましたか。

今川:試験当日は、生徒役の試験官の前で授業しました。ちゃんとあてましたよ、生徒役の方に。「まるまるさん、ちょっとこの問題どう?…」みたいに。試験に落ちても移住することは決めていたので、幸い評価していただけて安心しました。

(福岡の大学を選んだことが、佐賀県とのご縁の始まりでした。)

日本全国どこで働いても、仕事の質、なりたい自分は変わりません。

-- 教員を目指したきっかけはありますか。

今川:もともとは両親が教員だったことです。父親は高校教師。母親は保育士。立場は違っても、家庭の中で教育に関するキーワードが飛び交う環境でした。具体的に小学校の教員を意識したのは、僕が小5~6の時の担任の先生の影響が強いですね。手加減なしの、全力で遊んでくれる先生だったんです。サッカーも、鬼ごっこも、ケイドロも。僕たちも今日は先生を倒すぞ、よっしゃ全力で行くぞと張り切って。すごいいい先生だったな。こういう先生になりたいなと当時は思いましたし、今でも目標としている先生です。

-- 4年間の教員経験で、その先生に近づけましたか。

今川:いやぁまだ、4年目のペーペーですから。1割くらいしかいってないんじゃないでしょうか。いざ自分が同じ先生になってみると、その先生がいかに、僕たちのことを最優先に考えてくれていたか、ということがわかります。すごい先生だったと思います。でも僕も、子どもたちに全力で向き合う姿勢だけは真似できていると思います。ですから、子どもたちが一緒に1年を過ごして、あるいは大人になってから振り返ってみて、あの先生でよかったなぁと思ってくれるように頑張りたいですね。努力します。

-- 教員、特に小学校の先生という仕事の楽しさを教えてください。

今川:小学校は6年間、発達段階的に心身ともに一番成長する時期なので、できないことができるようになっていく姿を毎日肌身で感じられることにやりがいを感じます。反対に難しいのは全部をまんべんなく教えること。先生にも苦手なことはありますもんね。

-- 小学校の頃は、先生が本当に立派な大人に見えてましたよね。でも実は、失敗した人の方が、ということがある。

今川:私は学生時代、算数がずっと苦手で。センター試験も数学が足を引っ張ったので今でも苦手意識があります。だから教える側としては、むしろ算数は得意なのかもしれません。苦手だったのでどこでつまづくのかわかるから、寄り添って教えてあげられる。ということがあるかな。

-- 地域に移住することをキャリアダウンと感じられるケースもあると聞きます。佐賀県、特に武内町のような小さな町で働くことに不安はありませんでしたか。

今川:キャリアダウン、全然考えていません。教員は日本全国、どこにいてもやることは同じかなと思っています。大きな都市、あるいは小さな町。それぞれに大変なこともありますが、生徒たちの先生という立場には変わりはありません。こっちに来て仕事の質が下がったとか、まわりの評判がどうかなというのは考えたこともないです。

-- 佐賀に来て、小さな小学校で働いて。楽しんでいますか。

今川:僕の場合、たまたま妻が佐賀の人だっただけで、結果的に自分に合っている選択だったかな。先生方は優しく接してくれますし、したいこと、提案したことを柔軟に受け入れてくださいます。それにプライベートでも、休日に行きたい観光名所や全国的に有名な行事も数多くあります。こう見えてアウトドア派なので、妻とこの先、いろんなところへ出かけることを楽しみにしています。

-- 同僚教員の方々へ広島風お好み焼きを振る舞う話もあると聞きました。

今川:「広島風」ではありませんね。お好み焼きと言えば広島です。佐賀の文化を僕が楽しんでいるように、佐賀の方々にも広島の文化に興味をもっていただいて、それを楽しんでもらえたら嬉しいです。

-- 本日はありがとうございました!

(教頭先生「お好み焼きパーティーはいつ開催する?」)

インタビューを終えて。

小学生にとって、学校の先生から受ける影響は甚大です。よくも悪くも。先生にしてもらって嬉しかったことは一生覚えているし、腹が立ったことも一生覚えています。そうですよね。しかもそこに、子どもが選べる選択肢はありません。難しいですね。

だから、こうしてインタビューで「いい先生だな」と思える方と出会えると、ホッとします。周囲の先生方が優しく対応してくださったり、県や教育委員会が「いい先生」を見つけるための努力をしてくださっていることを知ると、この町、この県を選んでよかったなと感じることができます。

子どもたちが取材のライター、カメラマンに興味津々で話しかけてくれる姿を見て、なんかいいなと思いました。なんかいい学校がもっともっと増えていくことを願って、この記事を読んでくださった現職教員の方、特に県外の方に、下記『さがUJIターン現職特別選考』をご紹介させていただきます。いち県民からは以上です。

【※さがUJIターン現職特別選考】
教員として、佐賀県への移住を考えている方へ。
R7年度の募集要項はR6年3月上旬に公開予定です。
くわしくは佐賀県教育委員会の募集ページをご覧ください。
https://saga-kyoin.jp/selection/sel001/

お問い合わせ先
佐賀県教育委員会事務局 教職員課
TEL: 0952-25-7212 FAX: 0952-25-7319
MAIL: kyoushokuin@pref.saga.lg.jp

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文章:いわたてただすけ
写真:野田尚之

 

公開日:2024年02月22日
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