木の香りが好きで林業を仕事に選んだら、家族の未来に明るい光がさしたように感じました。

名倉 航太朗さん

名倉 航太朗さん

山口県嬉野市

  • 移住種別Iターン
  • 移住の時期2022年
  • お仕事林業(太良町森林組合)
  • 挑戦したいこと 移住者交流

佐賀県南西部、長崎県との県境にある太良町には、山、海、川、そして明るい太陽。移住者が夢見るあらゆる自然が色鮮やかに共存しています。山口県の離島から移住してきた名倉さんは、そのうちの「山」で働く林業従事者です。仕事でも、プライベートでも。何かを選ぶなら「好き」を基準にしたい。素直な気持ちで転職を、移住を考えたら、名倉さんがたどり着いたのは佐賀県太良町でした。
いつか仕事にしたかった。こんな暮らしをしたかった。夢がかなう佐賀と出会ったきっかけを聞いてみました。

ログハウスの木の香りが、将来の仕事を決める原体験になりました。

-- 木に関わる仕事をしたいと思うようになった理由を教えてください。

名倉航太朗さん(以下、名倉):木の匂いが大好きなんです。原体験は、おじいちゃんのログハウス。幼少の頃、実家からそれほど遠くないところにおじいちゃんが建てた山奥のログハウスがあって、多い時は毎週、せがんでは連れて行ってもらってました。露天風呂を作るのは手伝うことができたんですよ。石を積んでコーキング(※)して、足湯も作って完成したら一緒に入って。入浴中もやっぱり木の香りがあって。その体験が大きくなってからもすごく記憶に残っていて、就活する時は木に関わる仕事をしようと決めていました。就職したのは主に住宅リフォームを手がける工務店です。

(※コーキング:建築材の隙間を埋める技術)

 

-- 家を建てるという立場から「木」と関わってみてどうでしたか。

名倉:リフォームのおもしろいところは、もとの建物を調査、解体する過程で、新築当時の大工さんの技術がうかがえること。改修が始まると現場で大工さんの手伝いをしてました。現代の大工さんの技術もやはりすごくて、それを隣で眺めながら、自分自身の作業効率も向上していくのが楽しくて。過去の技術と今の技術を繋いでいく、そういう経験には学ぶことが多かったです。一方、過去の建材、現在の建材と、様々な木材を目にしているうちに、素材としての「木」そのものにも興味を惹かれている自分に気づきました。木を使う仕事だけではなく、木を育てる仕事、素材を生産する側の仕事もしてみたくて、いつか転職するなら林業。という気持ちがありました。

 

-- 住宅街でのリフォームから山の中での林業へ。働く環境が大きく変わりました。どう感じていますか。

名倉:とても満足しています。一番良かったのは、オンとオフがはっきりしていること。山中の、自然の中での仕事なので、陽が落ちたら作業を終えて、残業もなく定時に帰ることができます。家族で毎日一緒に夕食をとれますし、子どもと遊ぶ時間も充分あります。休日もちゃんと休めます。生活習慣、生活のリズムが整いましたね。会社勤めで現場の仕事をしていると、どうしてもキリがいいところまで残業で。と考えて無理をしていることが多かったので、この点が改善されたのはすごくいいですね。

(未経験者でしたが、面接時の「大丈夫」の言葉通り、じっくり育てていただいています。)

新しいところで新しいことに挑戦するのを楽しみに感じました。

-- 木の仕事、林業が盛んな地域は他にもあります。なぜ幼少期から過ごした山口県を遠く離れて、佐賀県の太良町で働くことを選んだのでしょうか。

名倉:ひとつは、結婚した相手が長崎県の出身だったこと。将来子育てをするなら実家に近い方が嬉しいと言われていたので転職するなら移住もする気でいました。今は妻の実家へ車で1時間ほどの距離に住んでいるので、いつでも帰省できる環境には喜んでくれているように思います。もうひとつは移住支援のサポートが親切だったこと。正直なところ、移住先、転職先は九州の割と広い範囲から検討していました。各県の移住支援の窓口に「どんな移住支援をしていますか」とメールを送っていたんです。その中でも、佐賀県の移住支援室は、お返事が早くて丁寧。県庁まで対面の相談に行くと、こういう制度もある、こういう選択肢もある、と質問した以上の情報がどんどん出てきて驚きました。その時に紹介されたひとつが太良町森林組合の求人で、今の僕の職場です。あの時、あの対応をしてくれたあの方がいなければ、僕は今ここにいなかったでしょうね。

 

-- 職場とお住まいは違う市町ですが、そこの理由も教えてください。

名倉:実は住まいは職場のある太良町ではなくて、職場から車で20分の距離にある嬉野市なのですが、これは同じ佐賀の中でも市町によって移住支援制度の内容が少しずつ違うことを教えていただいたからです。私たち夫婦の場合では、嬉野市が実施していた「結婚新生活支援事業補助金」(※)という制度がピッタリでした。

(※結婚新生活支援事業補助金:2023年3月で募集終了しています)

 

-- 最初に太良町森林組合を訪問した時の印象を教えてください。

名倉:本当にいい人たちだなと。他の地域での求人に応募すると、大体は事務所で担当者の方と1対1で話すだけ。転職活動ってそういうものかなと思っていましたが、太良町森林組合では採用担当じゃない人もたくさん話しかけてきてくれましたし、予定になかった現場見学に連れ出してくれて、陽が暮れるまで、質問や相談を聞いてくれたり。ここで働きたいとお伝えした時なんかは、大事な決断だからまずは1週間、体験で働いてから決めたらどうかと気づかってくれて、それも嬉しかったです。

 

-- 親身でおせっかいなのは佐賀県民の特徴かもしれませんね。

名倉:すぐ、ここに来たいなと思いました。選択肢は他にもいくつかありましたが、ここで働き生きている自分たち家族がイメージできたのが太良でした。長く住んでいた山口県を離れて、家族や友人と遠く離れる決断にはなりましたが、その不安より新しいところで新しいことに挑戦するのを楽しみに感じられましたね。

 

-- 実際に働いてみてどう感じていますか。

名倉:自然の中で働くので、体力的には疲れる面もあります。暑い、寒いは、強烈です。でも体力的な疲れは帰って寝たり休日に楽しいことをしたらリフレッシュできるんですけど、精神的な疲れはなかなかとれないものだと思っていて、自分にとっては精神的には疲れない、今の環境がピッタリ合っています。何よりも、自分が好きなこと、やりたいことを仕事にできる。それが一番幸せなことだと感じています。

(見上げる木は、数十年前の先人が植えたものです。)

林業という楽しすぎる仕事に光がさしていく過程に関わっていきたい。

-- 林業を仕事に選んだ今、この仕事を続けていく上で目指していること、実現したいことはありますか。

名倉:林業は安全管理が大切なので、どんな仕事をするにも資格が必要なんですね。僕はまだチェーンソーと雑草の刈払機、この2つの資格しか持っていないので、次は重機を動かせるようになったりと、できることを増やしていきたいです。転職してから1年3カ月。職場の先輩方に教えてもらうばかりではなく「そろそろ戦力になってきたな」と認めてもらえるよう頑張ります。

 

-- 林業の魅力はどこにありましたか。

名倉:まずは、やればやるだけ技術が上達していくというおもしろさ。木を倒すと言っても、1本1本の木に個性があって傾きや地面の状況がまったく違うんです。その個性をしっかり理解しながら、狙った方向に木を倒せたときは本当にやりがいを感じます。毎日その達成感がありますね。それと、間伐(※)する前には薄暗かった森が、一通りの作業で生まれ変わって、明るく陽が差しこんで来た瞬間を見るとこみ上げる充実感もあります。反対に間伐されない山林がそのまま放置されると、ただ不気味な雰囲気になるだけでなく木の1本1本が痩せて細長くなるので、強風で折れたり土砂崩れで斜面が崩れやすくなったりします。

(※間伐:密集しすぎた木と木の間隔を適切に広げるために一部の木を切り倒すこと)

 

-- 木材を育てるということは、地域の安全を守る仕事でもありますね。

名倉:そういった観点でも林業の人手不足は大きな問題です。太良町森林組合では、林業という仕事の地位向上にも取り組んでいます。木が好きな人。自然が好きな人。森の守り手となることに関心がある人。ほんの小さな興味でもぜひ一度現場に遊びに来ていただいて、私たちの活動を体験していただけたら嬉しいです。もっと言うと、できれば一緒に、山林で働く仲間が増えてくれたら嬉しいな。この記事を読んで会いに来てくれる方がいたら、めちゃめちゃ丁寧に、何日でも太良の山林を案内いたします。林業の仲間を大募集中です。ぜひ、求人(※)を見てみてください。

(※太良町森林組合求人ページ:https://tara-mori.jp/recruit

(移住してすぐ、子どもが生まれました。これから佐賀で、子育てしていきます。)

佐賀に移住した人、移住したい人と、もっと繋がっていきたい。

-- これから移住を検討する方に向けて、住むところとしての太良や佐賀の魅力を教えてください。

名倉:太良町の魅力は、自然の種類が多いことです。山が近くにある。海も近くにある。畑もあり果樹園もあって、そういういろんな自然が近くにあっていつでも触れ合えます。

 

-- 子育てする環境としても魅力的ですね。

名倉:今はまだ子どもが小さいのであまり環境を活かせていないのですが、車で20分くらいの距離に嬉野、武雄、鹿島とか、それなりに大きな街がいくつもあり、最近は移住者の方がやっているカフェにも出かけました。買い物やちょっとしたデートにも全然困らない環境だと思います。前に住んでいた場所がもっと田舎というか離島だったので佐賀は生活しやすいです。便利としか思えないです。

 

-- 最後に、今後の佐賀でのプライベートに期待することを教えてください。

名倉:交友関係を広げることです。幸い家族や友人は山口県からたまに旅行がてら会いに来てくれるのですが、まだこちらでは職場外での交友関係がなかなか広がっていません。今後は、地元の方の集まりや、移住者の方と交流していくところを挑戦していきたいと思います。同じように感じている方と、繋がりたいです。

 

-- 今日はどうもありがとうございました。移住者同士、集まりましょう!

インタビューを終えて

移住者あるあるですが、その土地を気に入ると、それまでまるで関心のなかった「地域への貢献」に目覚めることがあります。普段の生活では、私たちは誰かが山林を守っているなんて思いもしません。でも、移住者の仲間が、その仲間が、山林を守るための新たな仲間を探していると聞くとほんの少しだけでも力になれたらと思ってしまいます。

移住者インタビューは、移住者の紹介です。が、もっとそれ以上、次の移住者の心を動かす言葉が、届くといいなと思っています。この記事を最後まで読んでいただいて、

・林業いいな
・太良町いいな
・名倉さんいいな

などなど、思ってくださった方は、ぜひ転職、移住を検討してみてください。本文中にも紹介しました、太良町森林組合の求人ページももう一度こちらに掲載しておきます。関心がありそうな方への情報共有もご協力いただけますと幸いです。

太良町森林組合『働く仲間募集』ページ
https://tara-mori.jp/recruit

 

文章:いわたてただすけ
写真:野田尚之

 

公開日:2023年10月20日
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