仕事はそのまま。大好きな佐賀に来て、子どもたちとたっぷり過ごす暮らし。
石川 能さん
東京都(京都府出身)→佐賀市
- 移住種別Iターン
- 移住の時期2021年5月
- お仕事株式会社二番工房
- 好きなこと 子どもだちとサッカーをすること
水路が至るところにあり、城下町の雰囲気を感じさせる佐賀市内の中心部。佐賀県庁からほど近くにある老舗旅館が奥さんの実家だったことがきっかけで、お子さん3人とご家族一緒に東京から移住をしてきた石川能さん。何回か訪れたことがあった佐賀が好きで越してくることを決めたそうです。実際に住んでみて、子育てや仕事についてどのように感じているのか、お話を伺いました。
佐賀県に暮らしを移したら、子どもと過ごす時間が5倍に増えた
――まず、なぜ移住をしたいと思われたのでしょうか?
石川能さん(以下、石川):率直に、特に子育ての面で東京の暮らしを窮屈に感じていたからです。地方で子どもを育てたいと思ったんですよね。東京では、夜は毎日のように仕事関係の会食などがあって、子どもの寝顔しか見られませんでした。全然かかわれる時間がなかったのを「仕事だから仕方ないよね」と夫婦で諦めてしまっていて。もっと一緒に過ごせる環境を考えた結果が移住でした。
――お子さんとのかかわりを大事したいと思われていたのですね。実際に増えましたか?
石川:5倍くらい増えたと思います。リモートで仕事をすることになったので、子どもが帰宅する時間には家にいて、平日も一緒に遊んだり宿題を見たりできますし、朝ごはんを作ることなんかも担当しています。毎日ご飯を一緒に食べられることが嬉しいですね。僕が綺麗好きということもあって、家事をやることに関しても、全く苦でないです。いつも僕がいるようになったおかげで、最近は少しでも出張に出かける時には子どもたちに不満を言われるんですよ。
――そんなに変わったんですね!お子さんも嬉しかったことでしょうね。
石川:佐賀に来て、子どもたちのやりたいことを叶えてあげられることが増えたことも大きいです。東京だと、例えば球技は禁止されている公園が多いですし、遊んでいると注意されてしまうこともあったりします。だから、リフレッシュするには週末に郊外へ出かけて、キャンプをするしかなかったんです。でも佐賀だったら広い公園がいくらでもあるから、毎週のようにやりたいことができる。子どもはサッカーが好きなので、県内のあらゆる公園に行っては楽しんでいますね。子どもたちが「やりたい!」と遠慮なく言えるようになった気がします。
――佐賀県の人より公園情報を知り尽くしているかもしれないですね!とは言え、移住するに当たって、東京にはお子さんの友だちも多くいらっしゃったことでしょうし、今後の進路も踏まえると不安なこともあったのではないですか?
石川:確かに友だちと別れなくてはいけなくなることで、子どもたちから反対の声もありましたし、正直に言えば僕も佐賀の子どもたちと馴染めるのかは少し不安でした。でも実際に引っ越してきたら登校初日に家まで迎えにきてくれた子がいて「すごく良いところだ」と安心できました。進路のことについては、むしろ、(小学校受験や中学校受験が当たり前の)東京の環境に違和感を覚えていて。親も子どもも、選択肢が多いと、つい進路ありきで目指してしまうのですが、子どもたちが今やりたいことや楽しいと思うことを尊重したいなと思っています。その先に行きたい進路が見つかれば、協力したいですかね。
――確かに都会であれば選択肢が増えるので、選ぶことに必死になってしまうこともありますよね。やはり、石川さんご自身の描く暮らしがあったのでしょうか。
石川:東京では地域の繋がりが無く、もっと人との関係性を紡げる人間的な暮らしがしたいなと強く願っていましたし、子どもたちにも色々な人と触れ合ってほしいなと思っています。だから、公園に行って遊ぶ時には近くにいる他の子どもにも声を掛けたりなんかして。こうなると、完全にあやしい人ですね(笑)
――目の前の人になにげなく声をかけて、そこから自然に会話が始まっていく。そんな日常は、きっと彩りあるものになっているのだろうと思いました。
石川:周りの人との輪が広がっていくのが楽しくて。保育園の送り迎えでは思ったよりお父さんが少なかったんですが代わりにママ友ができました。そこからイベントに声をかけてもらったり、親子でフットサルしようと誘われたりして友だちが増えましたね。何かあった時に、飲みにいけるような人もできて、子どもを寝かせてから行くこともあるくらいです。
仕事と暮らしのちょうどいいバランスが取れた
――リモートで仕事をされてるようですが、主にどういったことを?
石川:CMのプロデュースをしています。色々なスキルや得意なことを持つ人を集めて企画にしていくプロセスが好きなんですよね。ただ、職業柄、常にクライアントがいる状態なので夜は会食が多かったんです。今は打ち合わせは全てオンラインにさせてもらうことで、子どもとかかわる時間が作れました。
――移住前は、お子さんに会えなかったほど多忙だったとおっしゃっていましたよね。そういった働き方の変化で、仕事自体に支障は無かったのでしょうか?
石川:コロナをきっかけに、ほとんどの社員が在宅勤務だったものの、移住先が九州ということもあって職場に伝えた時には、驚かれました。でも、クライアントとの打ち合わせは遠隔でもできますし、東京に行った日に合わせて会食を入れたりすれば問題ないです。たまに、相手の方が佐賀に来てくれることもありますし。以前は後輩に振っていた仕事を自分でやらなくてはいけなくなったりはしましたが、子どもとの時間と天秤にかけたら問題ないですよ。むしろ、僕がきっかけで移住をしたいという社員も出てきて、相談に乗っているくらいです。有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」に行けば困ることがないので紹介しました!
地域のために自分ができることをやっていきたい
――これから先も佐賀に住み続ける予定ですか?
石川:そうですね、もう家も建てましたし骨を埋める覚悟です(笑)
子どもたちも、好きなことをやって育ってくれたらいいなと思っていて。スポーツが大好きなので、すっかり家族揃ってサガン鳥栖のファンになりました。習い事も佐賀バルーナーズ(佐賀県のプロバスケットボールチーム)のジュニアスクールやSAGAアクアで飛び込みの練習をしていたり、佐賀でしかできないことを体験できています。僕も含めて、みんなが伸び伸びと好きなことをして過ごせたらいいですね。
――お話を通して、お子さんを中心としたご自身に合う暮らしと仕事とのバランスを作られていると感じました。仕事の面で、石川さんがこれから挑戦したいことはありますか?
石川:明確にあるんですよ。地域にもっと人が増えたらいいなと思っていて、佐賀のためになるようなことをしたいです。東京と地方の仕事は作り方が全然違いますが、外部にお金を払わなくても、若い人からおじさんまで、おもしろい人が集まって、それぞれの得意なことを生かせばより良い地域になるのではないかなと思っています。
インタビューを終えて
石川さんの話の主語には、いつも「子どもたち」がいる。その話ぶりから、佐賀で子どもたちと過ごす楽しさが伝わってきました。どんな瞬間も共にすることが石川さんご自身を豊かにしているのでしょうね。いろんな日々が重なって、佐賀の景色と一緒に思い出として刻まれていくのかなと想像すると、じんわりとあたたかい気持ちになりました。
文章:草田彩夏
写真:野田尚之