授かった福母の福、分けあえばもっと福
佐藤 美波 さん
東京都→大町町
- 移住種別Uターン
- 移住の時期2013年
- お仕事福母八幡宮 宮司
移住したきっかけを教えてください。
神社の家系に生まれ、神職になる前提で神職の資格が取れる大学に進学しました。大学卒業後は東京の神社で奉職しようかとも考えましたが、高校時代に神職だった祖父が亡くなり、祖母が神社の事務や運営のすべてを一人で担っていたため、祖母のために早く帰ってあげたいという気持ちがありました。大学4年生の春に祖母が亡くなり、すぐに佐賀に帰るか、東京の神社でキャリアを積んでから佐賀に戻るか悩みましたが、やはり祖父母は居なくとも二人の想いが無くなってしまった訳ではありませんし、いち早く自分自身を必要としてくれる佐賀の福母八幡宮へ帰ることが私の使命だと感じ帰郷しました。
移住するときの不安はありましたか?
全国的に人口減少も目に見えている中で、大町町は特に高齢者が多く若年層が少ない過疎地。また、福母八幡宮は地元に根付いた神社であるが故、人口が減少していく中での神社の運営を思うと将来に不安はありました。しかし、人口減少など自分一人ではどうしようもないことを嘆いて不安になっていても仕方がないので、今私に出来ることを考えて思いつく様々な事を行いました。その中で2017年に行ったクラウドファンディングをきっかけにメディアに取り上げられる機会が増え、日々のSNSの発信なども相まって徐々に参拝者も増えていきました。また、宮司である私自身が20代の女性であるので、自分の心が動くデザインのものや見ていて癒されるものを考え、授与品などに取り入れました。自らデザインした月替わりの御朱印やお守り、佐賀県産の檜で作った御朱印帳などの頒布により、女性の参拝者も目に見えて多くなっていきました。生活面でいえば、生まれ育った地元なので不安はありませんでしたね。東京時代は都会にいる緊張感がありましたが、佐賀での暮らしは幼い頃から慣れ親しんだ人ばかりで穏やかな田舎の良さを感じています。
移住してからの暮らしや移住前との変化について教えてください。
東京時代と比べると自家用車での移動が多く、歩かなくなりました。物価が安いのはいいところですね。地元ならではの横のつながりがあり、お裾分けなど人の温かさに触れる機会も多いです。また、都会では人工的な季節感(イルミネーションなど)を感じることが多かったですが、こちらでは匂いや陽の温かさ、鳥の声、緑や花等の自然から四季を感じることができ、年々その良さやありがたみ、それらによる心の安定感を感じています。
これからの夢や目標はありますか?
都会でも田舎でも、せわしなく日々が過ぎてゆき、沢山の情報に溢れる昨今。時々息が詰まりそうになったり、気を張りっぱなしで常に力んでいたり、呼吸が浅くなっていたり、うまく息が出来ないほど苦しくなったり。誰にでも、いろんな悩みや問題を抱えているときがあると思います。そんなときに思わず足が向き、心の拠り所となる神社にできればいいなと思います。そのきっかけとして花手水や様々な授与品企画なども考えています。これからも益々新たな取組を考え続けていくつもりです。
移住をされる方へアドバイスをお願いします。
移住したいという気持ちがあるならその自分の直感や気持ちを大事にしてほしいです。移住後に様々な不満や不便があったとしても、自分の気持ちに従って決断したことならどんなことも乗り越えていけると思います。そして何事も“楽しもうとする心”が大切だと思います。どこにいても何をしてもそうだと思いますが、欠点やデメリット・ネガティブに目を向けたら楽しくなく不平不満が出てきます。100パーセント良い面しかない事はないように、100パーセント悪い面ばかりとういうことも無いはずです。どんな物事もどこに重きを置くか気持ちを向けるかは自分次第でどうにでもなります。自分で楽しむためにどうしたらいいか、良い面を限りなく伸ばす為にはどうしたらいいか常に考えることが大切です。私自身も福母八幡宮の良いところ、魅力を益々多くの方へ知って頂けるように努力している所です。独りじゃない。孤独じゃない。みんな同じく頑張っていると、常に自身を鼓舞して歩みを進めましょう!
福母八幡宮への思い
私はまだまだ神職としての経験も浅く未熟者です。そんな私ですが、だからこその視点や思うこと感じることがあると思います。そして女性ですからこれから母になるかもしれない。そんな中で、私だからわかる気持ちや話せる想いが参拝者の方にとってあるかもしれません。微力ではありますが、福母八幡宮へお参りに行くきっかけに私なんかでもなれたら嬉しいです。「福の母鎮まる宮 福母八幡宮」に女性の宮司がいて、誰にとっても母のように優しく包まれる雰囲気の神社にしたいです。最近はご家族連れでの参拝も増えており、小さい子どもさんが境内を元気いっぱい楽しそうにはしゃぐ姿は見ているこちらも癒されます。今後は子どもさんも安心して遊べるように境内もより整えていきたいと考えています。
インタビューを終えて
インタビュー中、同世代の女性として佐藤さんのお話にとても惹きつけられました。しっかりとしたビジョンを持ち、「芯の通った女性」という言葉がぴったりの方でした。
大学卒業後すぐに神社を継ぐということは、簡単に決めることができるものではありません。若くして宮司となり、世間からの注目を浴びるプレッシャーを想像すると、現在に至るまで様々なご苦労をされたのではないかと思います。
そんな中でもご自身のカラーを出し、魅力ある神社へと変貌させていく佐藤さんには頭が下がる思いです。今後も佐藤さんのご活躍から目が離せません。